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看護生命科学分野

看護生命科学分野とは
 

 臨床におけるあらゆる看護問題に対して、病態のメカニズム解明などの基礎研究を通して、科学的根拠のある看護ケアを探求していく分野です。看護師としてケアを実践していくなかで、こんなことを考えたことはありませんか?

 

「本当にこれって患者さんのためになっているのかな。これでいいのかな。」
「後輩にどうしてこのケアするのかと聞かれたが、その根拠がわからない。」
「患者さんが困っている症状について、看護ケアで少しでも改善できる方法 はないのかな。」
「患者さんに本当に役立つケアを提供したい。」   etc.


 こういった疑問や想いをきっかけに、まずは現状把握のための実態調査を行い、基礎研究や動物実験により遺伝子や細胞レベルで何が起きているのかその原因やメカニズムを探り、得た結果をもとに効果的なケアを開発していきます。
 医療のなかでは、原因不明の疾病やエビデンスがはっきりしないものがたくさんあります。看護ケアも明確な科学的根拠のないものが数多くあり、それには看護の歴史のなかで経験的な知見が重視されてきた経緯があります。しかし、近年世界の看護学でバイオロジカルサイエンス分野が重視されてきているように、日本国においても看護師が患者の体内で起こっている現象を根本的な部分から追究し、科学的根拠のあるケアを実践していく時代へと移り変わってきています。

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看護師が研究を行う意義
 

 医師の役割は病気そのものの診断や治療ですが、看護師は患者さんに一番近い存在として病気の予防や治療の管理などを行う役割があります。その中でも、看護師だからこそ気付くことができる患者さんの小さな苦しみや生活上、治療管理上の問題を、科学的根拠をもったケアとして患者さんへ提供していくことがこの分野における最大の目標です。

 患者さんの問題に対し、その根本を追究する場合、基礎的研究を行う場合があります。一見、基礎的研究は看護とは程遠いもののように感じるかもしれません。しかし、看護師の立場で患者さんの声に耳を傾け、患者さんが抱える問題に焦点を当て、そのメカニズムが解明できれば、必ず患者さんのQOLの向上へとつながっていきます。看護生命科学分野は、母性、小児、成人、老年、慢性、急性、精神などの専門性の枠を越えて、すべての看護領域を通して患者さんに還元できる看護分野です。 

トランスレーショナルリサーチにて患者さんへ還元
 

 科学的根拠のある看護ケアを追究するため、看護学トランスレーショナルリサーチとして研究を展開します。看護学トランスレーショナルリサーチとは、「基礎から臨床への橋渡し研究」と言われておりますが、私たちは、「基礎と臨床の双方向から患者さんの問題を捉え、明確化し、追究し、患者さんへ還元する看護研究と考えて研究を実施しています。主に、1.疾病に対する適正な与薬方法の確立(看護薬理学研究)、2.疾病の予防・治療に関する実態調査研究、3.看護技術開発のための病態メカニズム解析、4.疾病の予防・ケアに関する臨床試験等を行っています。

具体的にどのような研究をするの?
 

 現在は、皮膚障害に対する看護ケアの開発などを目的とした研究に主に取り組んでいます。その1例をご紹介します。

 内科外来で肥満や糖尿病患者の悩みに皮膚トラブルが多くあることが実態調査により判明し、「多くの疾病の基盤病態である肥満と皮膚トラブルには何らかの関係性があるのでは?」という疑問のもと、研究をスタート。肥満と皮膚の関係における病態メカニズムの詳細は不明確なことが多かったため実験研究を実施。動物実験の結果、肥満の皮膚は表面は変化ないが、皮膚内部では炎症所見があり、老化が進み、コラーゲン等が減少していることが明らかとなりました。また、肥満が引き起こす心臓などへの障害メカニズムに酸化ストレスが関係していることが分かっており、実験により皮膚においても同じメカニズムでトラブルを引き起こしていることも明らかとなりました。
 研究成果としては、具体的な治療は医師の範疇となりますが、看護師は予防的観点から、BMIの高い患者さんに対して皮膚のチェックを進めること、皮膚の中の酸化ストレスサインを調べることができれば早い段階からそのレベルに応じた保湿や紫外線対策などのケアがアドバイスできることなどが考えられ、現在皮膚検査キットの開発に取り組んでいます。また、皮膚障害の原因を予防する酸化ストレスに対するスキンケアも開発中です。

 

【 研究実績 】

・適切な疼痛管理に対する研究
・薬剤による血管痛に対するケアの研究
・皮膚バリア機能の改善に対するケアの研究
・肥満者の創傷治癒改善に対するケアの研究
・体格を考慮した薬剤投与量調整に関する研究
・術中患者の心理状態に対する自律神経指標の評価
・術中低体温予防に関連する因子の探索
・光イメージング技術による皮膚バリア機能の測定
・マスク換気時の換気量・圧力分布に与える影響
・アロマオイルの経皮吸効果の検証 など

母斑

​実験設備

本学は組織学、解剖学、解剖生理学、薬理学、分子生物学の研究手法を可能とする看護専門の実験設備を有しており、動物実験および細胞実験も可能としています。

ヒトに用いる生理学的測定器は、皮膚生理機能に関する測定機器(水分、TEWL、皮脂、色素、真皮エコー)、エコー、呼吸機能測定、自律神経測定、アイトラッカー、体脂肪測定、筋力測定、血管透過装置などがあります。

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​学生生活

講義や演習の他に、毎週ゼミを開催しています。それぞれの研究テーマに合わせて、教員や領域内の学生とともに情報共有や意見交換を行っています。時には鋭いつっこみを受けながら、和気あいあいと、熱く議論をしています。

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​なりたい自分になる!

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 博士前期課程 看護生命科学分野 2年 木田真胤

救急・集中治療の看護に携わる中で、病態生理を踏まえた看護ケアに興味を持ち、大学院への進学を決めました。現在はクリティカルケア領域における痛みをテーマに研究に取り組んでいます。働きながらの進学ですが、家族、先生方、院生、職場の支えにより両立することができています。

大学院に進学して、様々な経験や考えを持つ方との活発な議論を経験することで、物事を多角的に捉える力や論理的思考力が身に付いたと感じています。また働きながら進学したことで、身につけた力をすぐに臨床に活かすことができ、良いサイクルで学べていると考えています。今後は、救急・集中治療領域の看護の質を高めることに貢献したいと考えています。

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在校生からのメッセージ

卒業生からのメッセージ

【現在看護師として臨床で勤務する2015年度卒業生の声】
大学4年生の卒業研究において、肥満の患者さんでは皮膚障害を患っている人が多いものの、その問題に対する解決策や皮膚障害が起きやすいメカニズムが分かっていないことを知りました。「臨床現場で生じている問題を根拠に基づいた方法で解決したい」、また「どのような病棟においても自分で解決できるように知識や技術を身に付けたい」と思い、大学を卒業後、そのまま大学院へ進学しました。大学院では組織学や分子生物学的手法を用いて研究を行い、現在は、病院の看護師として働いています。新人として入職した当時、技術面では未熟さがありましたが、患者さんの状態をアセスメント、ケアする時に大学院で学んだ根拠に基づいた考え方が1年目においてすぐに役立ちました。たとえば、高血圧や動脈硬化をもとにして起こる心筋梗塞に関して、メカニズムに関する文献を読むときには、分子や遺伝子レベルで記されている内容が理解でき、医師とのカンファレンスにおいても目の前の患者さんの状態や治療が理解できます。このようなことから、今、私は、患者さんへ病態や薬の説明をする際に、より分かりやすく説明することができることを実感しています。

 

​さいごに・・

臨床で日常的に行っているケアが、どのようなメカニズムのもと患者さんへ作用を及ぼしているのかその根本的なところを理解したい、本当に意味のあるケアを実践したい、実験や研究を通して看護の視野をひろげたい、そんな方にぜひ学んでいただきたい分野です。日頃臨床で抱いている疑問に目を向け、ともに看護の質をあげていきませんか。
看護のなかにまだまだ多くの可能性を見出せる分野です。

ともに学びを深め、よりよい看護を追究していける仲間を教室員一同でお待ちしています。

 

​2025年度 入試関連情報

 

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【 相談連絡先 】
 横浜市立大学大学院 医学研究科 看護生命科学分野
 教授 赤瀬智子
 E-mail :akase@yokohama-cu.ac.jp

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